不動産売買における瑕疵担保責任の請求期間について

不動産を売却するとき、売主は「瑕疵担保責任」という法律上の責任を負うのが一般的です。

売主の立場からすると、可能な限り回避したい責任でもあります。

瑕疵担保責任……。ずいぶんと難しい漢字ですね。そして、普通はなんのこっちゃ分からないと思います。

これは民法に定められた法律上の責任ですから、まずは民法の規定を見てみましょう。

民法

第570条(売主の瑕疵担保責任)

売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。

まず、「瑕疵」って何だ、という話ですが、これはキズとか欠陥のことです。法律用語でしか見たことがありません。

要するに、ここでは、売ったものが欠陥品だった場合にどうするかということが書かれています。

で、その具体的な内容が書いてあるのが民法の第566条です。ごちゃごちゃと書いてありますが、別にちゃんと読まなくてもいいですよ。

民法

第566条第1項(地上権等がある場合等における売主の担保責任)

売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。

ざっくり言うと、買った不動産に他人の権利が付いていて、駄目じゃんこれじゃ使えないじゃん、というようなときに、買主は「契約の解除」または「損害賠償の請求」ができるということが書かれています。

売買したものが欠陥品だった場合もこれに従います。要するに、他人の権利も物の欠陥も一種の「瑕疵」だということですね。

というわけでこれまでの話をまとめると、瑕疵担保責任とは、もし欠陥品が売買されたときには、買主は売主に対して、契約解除または損害賠償を請求をすることができる、という法律上の責任のことをいうわけです。

瑕疵担保責任の責任期間

欠陥品を売ったら一定の責任がある、ということは分かりました。それ自体は別におかしな話ではありません。

しかしこの点についてよく問題になるのが、じゃあその責任は「いつまで続くのか」ということです。

永遠に? それだと怖いですよね。「明治時代にアンタのひいじいちゃんから買った土地、なんかよく分からん骨が出てきたから欠陥品だ損害賠償払え」とかひ孫の世代で言われても、いやいや知らんがなとしか言いようがないわけです。

そこで、法律では瑕疵担保責任の効果に一定の期間の制限を設けています。

民法では実質的に「売買から10年間」

民法では、まず、先述の第566条の第3項に瑕疵担保責任の期間の定めがあります。

民法

第566条第3項(地上権等がある場合等における売主の担保責任)

前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

ふむ、なるほど。買主がその事実(瑕疵の存在)を「知った時から一年以内」に言わないと、契約解除も損害賠償請求もできないというわけですね。

これを、瑕疵担保責任の請求に関する除斥期間といいます。期間は1年。まぁ、別にこんな除斥期間なんていう法律用語は普通覚えなくていいです。

なるほど〜、1年か。まぁそんなもんかな〜。

……でも待てよと。瑕疵の存在を「知った時から」1年だと、先程のひいじいちゃんの土地の例で言えば、ひ孫が骨を発見して1年以内に損害賠償を言い出したら、あれ、請求できちゃうことになるのでは? たとえ100年前の土地売買に関するクレームであっても。

しかしこの点は、民法の別の規定でカバーされています。

民法

第167条第1項(債権等の消滅時効)

債権は、十年間行使しないときは、消滅する。

消滅時効の定めです。長い間行使されなかった権利は、10年経つと消滅するという民法の一般的な時効の規定ですね。

瑕疵担保責任に基づく請求も、この時効による消滅が適用されます。そういう最高裁判所の判決もでています(平成13年11月27日判決)。

よって、民法に基づく瑕疵担保責任は、「売買から10年」以内に請求されなければ消えるという条件付きの責任なのです。

これをまとめれば、瑕疵担保責任の請求期限は「瑕疵の存在を知った時から1年」または「売買から10年」の短い方が限度になると言えるでしょう。

しかしまぁ、売った側からすれば、実質的に売買取引の日から最長で10年間は買主から文句を言われる可能性があるわけですから、結構長い期間ですよね。

でも、民法の原則にそのまま従えば、まさしく10年前に売った不動産のことで買主から文句を言われる可能性だってあるのです。

特約による責任期間の短縮

民法の規定による瑕疵担保責任の期間は、一般的な不動産取引の感覚からすると長いんですよね。

最長10年もの期間が経過したら、売買契約をした当時のことなんて詳しく思い出せないと思います。

そこで、不動産取引の実務では、この瑕疵担保責任の期間をもうすこし短く限定する特約をする場合があります。

例えば、1年とか2年とかです。一般的には2年というのが多いかもしれません。

特約なので何年にしたっていいのですが、不動産業者を規制する宅地建物取引業法には、以下のような規定があります。

宅地建物取引業法

第40条(瑕疵担保責任についての特約の制限)

宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物の瑕疵を担保すべき責任に関し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第570条において準用する同法第566条第3項 に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条 に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。

難しくごちゃごちゃと書いてありますが、要するに、瑕疵担保責任の期間を特約で短縮する場合であっても、その期間は「2年以上」でなければならないということです。

この宅地建物取引業法の規定は、プロの業者が一般人に対して不動産を売却するときにのみ適用されます。ですから、一般人同士の取引では別に関係ないのですが、ここで定められている期間が長さとして丁度よいので、目安として使われることが多い印象ですね。

ちなみに余談ですが、この瑕疵担保期間の制限の規定は、宅建試験においては「自ら売主の8種制限」といわれ、受験生にとっては非常に有名な重要論点のひとつです。

それはともかくとして。

そんなわけで、瑕疵担保責任の期間は特約で短くすることができます。なお、特約が付される場合には、不動産の売買契約書に必ず明記されますので、読めば分かります。

逆に、売買契約書に瑕疵担保責任の記載がなければ、民法の規定に立ち戻って「知ってから1年」で「最長10年」ということになります。

瑕疵担保責任を免責とすることもできる

期間を短縮するだけでなく、特約により瑕疵担保責任を免責とすることもできます。

免責とはつまり、物件に欠陥があっても売主は一切の責任を負わないとすることができるわけですね。

通常、こうした免責特約はプロの業者同士の取引において使われることが多いです。プロなんだから、しっかり調べてから買えばいいよね、ということです。

不動産業者が一般人に対して物件を売るときは、こうした免責特約はつけられません。先程の「2年以上」の宅建業法の決まりがあるからです。

アマチュアの一般人同士の取引において免責特約をつけることは理屈上は可能ですが、よほど慣れた不動産投資家などでない限り、あまり一般的な契約条件ではないと思います。

新築住宅を買ったときの瑕疵担保請求期間は「10年」

特別な例として、新築住宅を購入したときには、10年間、売主に対して瑕疵担保責任を請求することができます。

住宅の品質確保の促進等に関する法律

第95条(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例)抜粋

新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、民法第570条において準用する同法第566条第1項 並びに同法第634条第1項及び第2項前段に規定する担保の責任を負う。

新築マイホームを買ったときなんかが対象です。

細かい説明は省略しますが、要するに、ピカピカの新品を売ってるはずなんだから、当然10年くらいは保証してくれるよね、ということが、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」という特別な法律(通称、品確法)に定められているわけです。

商法における瑕疵担保責任の期間は6ヶ月

ちなみにあまり関係のある人は多くないかも知れませんが、商法にも瑕疵担保責任に関連する規定があります。

商法というのは商人間の取引に関する法律ですから、普通は会社と会社の取引なんかが対象になります。一般人には関係ありません。

商法

第526条(買主による目的物の検査及び通知)

前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が六箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。

ここでは、売買目的物に瑕疵があったときには、「6ヶ月以内」に言わないとだめよ、と書いてあります。ですので、商法における瑕疵担保責任の期間は6ヶ月です。

商人同士の取引なんだから元々ちゃんと調べてから買うはずだし、期間も短くて良いよね、ということです。

この期間も特約で変更することができます。通常は、前述のプロの業者同士の取引である場合に、瑕疵担保責任を免責とする形で特約をつけることが多いですね。