AI技術の発展によって私たちの仕事や職業は本当に奪われてしまうのか?

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ここ数年、AIに私たちの仕事が奪われるという未来像の話が、まことしやかに、まるで脅し文句のようによく聞かれるようになりましたね。

AIが囲碁棋士の世界ランカーに勝利するなど、技術の進歩を感じさせる出来事もあったことで、AI技術への関心はより一層高まってきているように思います。

実際、AI技術の進歩は世の中を変える可能性を秘めていると思います。そして、少なくない領域の仕事が、AIでやった方が断然効率的ということにもなるでしょう。

では、人工知能技術の発展が私たちに与えるインパクトは、いったいどれくらいのものなのでしょうか。そして、どうすれば私たちはそうした未来に適応することができるのでしょうか。

機械対人間の闘争は過去にも存在した

仕事をめぐる人間と機械との間の争いは、今に始まった話ではありません。

200年前のイギリスでも、産業革命による機械工業の普及によって、労働者の職が脅かされる事態が生じています。これに対抗する労働者の暴動はラッダイト運動と呼ばれ、世界史の有名な出来事となっていますね。

このとき、機械によってオートメーション化が可能な単純労働は機械に置き換えられ、工場労働者は多くが失業しました。

しかし、逆にいうと、当時機械によって代替された仕事というのは、工場での過酷な環境下での単純労働など「あんまりやりたくない仕事」だったはずで、これを機械が肩代わりしてくれるようになったことで、人間の仕事は他のもっと安全で衛生的な仕事に変化したはずなんですね。

確かに、こうした仕事のパラダイムシフトは当初は混乱を生むと思います。しかし、長期的に見れば人間の生産活動に良い影響を与える可能性が高いと言えるのではないでしょうか。

人工知能に代替される仕事は何なのか?

おそらく、こうした話題に対する現代のビジネスパーソンにとっての一番の関心事は、人工知能によって代替される仕事はどういうものなのか、ということだと思います。

これについて、私なりの仮説を考えてみたいと思います。

肉体労働への影響は限定的

まず、人工知能は「知能」なわけですから、知的生産活動についてインパクトを与えるわけですね。

つまり、ハード的な仕事については直接的には影響を及ぼさない

産業革命のときには、蒸気機関等により物体を物理的に動かす技術が大きく発展しました。このときは肉体労働の従事者が大打撃を受けました。

しかし、人工知能はそれ単体ではモノを動かしたりはしないんですね。

もちろん、モノを動かすときの判断は的確に行うことができます。ですから、例えば建設工事等の場面において、設計図をスキャンして、必要な工程を理解し、クレーン等の重機を機械的に制御して全自動で建物を組み上げるようなことは、理論上は可能かと思います。

ただ、人工知能って、物理的な制御はまだまだ苦手なんですよね。なにしろ、先の囲碁の対戦でも、碁石を物理的に操作する機構は無かったために、碁石を置く工程は人間にやってもらっていたわけですし。

もちろん、やろうと思えばできるんだと思います。でも、そうした手足を実際に作るにはコストがかかる。さらに、物理制御するにも、これは知性に関する機械学習とはまた別の高度なラーニングコストがかかる。

すると、結局は人間がやった方が効率的だし、安上がりなんじゃないか、という結論に至りやすいだろうと思います。

ですから、物理的な仕事を人工知能が代替するのは現実的には難しいでしょうし、できたとしてもまだまだ時間がかかると思います。

知的労働は奪われる可能性が高い

反面、専門的な知識や経験を要する知的労働は、AIによって代替される可能性が高いですね。

これは、現在、比較的高給取りであるホワイトカラーのビジネスパーソンの仕事が奪われるということを意味しています。

財務や会計、法務、人事といったコーポレート部門はその影響を大きく受けるでしょう。また、マーケティングや企画部門なども、高度な分析や戦略立案の面においてむしろAIと競合する可能性が高いといえます。

さらに、これからデジタルネイティブ世代が世の中の主流となってくれば、こうした世代はオンラインで人を介さずに商品を購入することにも慣れています。すると、セールスについても、それをするのが人間であろうが人工知能であろうがどっちでも良いということになり、営業という仕事も必要なくなってくるかもしれません。

こうした意味で、現代のいわゆるオフィスワーカーというのは、将来、非常に危うい立場に置かれることが予想されます。

人工知能がやらないこととは?

さて、以上の通り、AIは、肉体労働は苦手ですが、知的作業は得意であるというのがひとつの大きな特徴です。

では、私たち人間はこれから肉体労働に従事すればよいのでしょうか?

そういうわけではありませんね。それでは、人がロボットに使われるような本末転倒な話になってしまいます。

確かに、人工知能は高度な知的能力を持っています。それは人間をも凌駕する性能でしょう。

しかし、現代の人間が行う知的生産活動の中で、おそらく人間だけができて人工知能にはできないであろう代表的な仕事がひとつあります。

それは、起業です。

人工知能は起業しない

人工知能は、自ら世の中を良くしようという動機は持ちません。人間に目的を設定されて初めて、その能力を課題解決のために活用します。

つまり、その目的設定を行うのは、やはり人間なのです。

私たちが、世の中を良くしたいと考え、経営者として人工知能を使いながら課題を解決してゆく。

これが、将来の望ましい人工知能の使い方です。

おそらくは、自らの仕事に目標を持たず、企業の従業員として作業をこなすだけのオフィスワーカーは、近い将来に人工知能によって淘汰されてしまうでしょう。

しかし、目的意識を持って仕事をしていれば、現存するインターネット技術を活用し、そして将来のAI技術を手に入れれば、人数は小規模でも影響力のある事業を始めることができるようになるはずです。

単純労働者の雇用が不要になるということが、かえって自らの起業を容易にするのです。

これこそが、人工知能技術が起こす世の中への大きなイノベーションのひとつであると思います。

そして、こうした将来の人工知能技術を使えるようにするためには、少なくともプログラミングやテクノロジーに関する基礎的理解が必要となります。

ですから、これからの未来を進む若いビジネスパーソンには、ぜひ、自らの仕事に目的意識を持って取り組み、可能であればテクノロジーに関するアンテナを張って自己研鑽をしてもらいたいと思います。

そうすれば、来たるべき新しい社会にも対応できる存在になれるはずです。

と、私は思っています。