不動産の売買予約がなされる意味と仮登記の効力について

不動産の取引においては、売買予約ということをする場合があります。

なるほど、読んで字のごとく、いま売り買いをするのではなく、将来の不動産の「売買を予約」するわけですね。

売買予約が行われるケース

不動産取引において売買予約が行われるケースはいろいろとあります。例えば、以下のようなものが考えられますね。

資金事情によるもの

買いたい不動産があって、本当ならいますぐにでも買いたいんだけど、手元にお金がないからすぐには取引できないケース。

お金が支払えないので、予約というかたちであらかじめ約束だけしておいて、後でお金が調達できたときに正式に売買契約を締結しましょうというものです。

非常に分かりやすい話ですね。

まあ、買うことが決まっているのであれば、売買契約は正式に結んでしまって代金支払いの時期だけ将来の日付にすればいいというケースもあります。しかし、正式な売買契約を締結するとなると、通常は契約締結時点で相応の手付金を支払う必要がでてきます。手付金の相場はだいたい売買代金の10%~20%とされていますから、手元資金がないという前提ではちょっと厳しいですね。

売買の予約契約の場合、一応、証拠金といった名目で多少のお金の支払いが必要とされることもありますが、通常は手付金よりもかなり少額で済みます。

こうしたことから、まず、資金的な事情によって売買予約という形式がとられることがあります。

時期的な都合によるもの

不動産の売主も買主も、日常生活の中でいろいろな事情を抱えています。特に売主は、現在まさにその不動産を使っているかもしれませんから、いますぐに売ることはできないかもしれません。

でも、その不動産を真剣に買いたいと言う人が現れて、さらに良い価格を提示してくれた場合には、じゃあ何年後だったら売っても良いよという約束をすることもあります。

そんなとき、売買予約を行うことであらかじめ将来の合意をしておくことができるのです。

法令や制度によるもの

また、不動産取引にはいろいろな法律が関わってきます。

例えば、農地を取引する場合には、農地法という法律の規定に従って行政当局の許可が必要になる場合があります。

行政関係の手続には数ヶ月単位で時間がかかることがありますので、とりあえず売買予約だけしておいて、許可がおりたら正式に売買契約を締結するといった形で利用されることもあるのです。

売買予約の効果

では、こうした場合に売買予約をしておくことにはどのような意味があるのでしょうか。

売買予約を行う一番の目的は、仮登記をするることにあります。

売買予約の契約書は正式な売買契約書に比べると非常に簡素なものですが、それでもれっきとした合意書面です。そして、この合意に基づいて、対象となる不動産の登記に売買予約の仮登記を設定することができます。これこそが、将来の正式な売買契約の締結を待たずにわざわざ売買予約を行う一番の理由といっていいでしょう。

売買予約の仮登記の意義

売買予約の仮登記は、正式には「所有権移転請求権仮登記」といいます。

登記簿においては権利部の「甲区」、所有権に関する事項の欄に記載されます。通常、原因として「●年●月●日売買予約」みたいなことが書かれて、権利者の住所と名前が記載されます。

では、売買予約の仮登記をするとどのような意味があるのでしょうか。

順位保全の法律的効果

法律的には、不動産の仮登記には順位保全の効果があるといわれます。

仮登記をしておけば、後から対象の不動産を買ったという人が現れても、「いや、ウチが先だ」ということを主張できるのです。

実際、後からきた人がたとえ売買代金を全額支払って所有権移転の登記まで済ませてしまったとしても、仮登記をしておくと、その後当初の約束に従って適切に売買が実行されれば、後からきた人と所有権の争いになったとしても先に仮登記をした人が勝つことになります。

ただし、仮登記だけでは所有権そのものを得られるわけではありません。しっかりと当初の売買を実行して、所有権移転の本登記をして初めて、遡って先の順位での権利を主張できるというものです。

物件確保の実態的効果

所有権移転請求権の仮登記にはそういう意味がありますから、実態としては、そうした仮登記の設定されている不動産を買おうという人は普通いません。

お金を払って不動産を買ったと思っても、後から無かったことにされるリスクがあるからですね。

そういう意味では、売買予約に基づく仮登記は、対象となる不動産に「先につばをつけている状態」を不動産登記上も明示することができ、実質的には後から入ってくる人を排除する物件確保の効果もあるということができます。

売買予約の契約書

売買予約に関する契約書は、先にも触れた通りかなり簡素です。一般的には、以下のような条項が盛り込まれます。

  • 売買代金の予定額
  • 売買の予定時期 / 期限
  • 正式な売買を実行する条件
  • 仮登記の設定に関する合意
  • 仮登記などに係る費用負担の取り決め

詳細な内容や文言については、個別の取引の事情により様々であるため、契約書の作成や解釈にあたっては不動産業者などの専門家に相談するのが現実的でしょう。

この手の契約書であれば、弁護士などの法律家でなくても、不動産業者であれば慣れたものなので、十分に理解しているはずです。