春は就職活動シーズンですね。会社の周りでも初々しいスーツの若い方たちを見る機会が多くなっています。
私は人事部でもなんでもないんですが、新卒採用の時期になると、現場社員の立場から採用選考の一部を手伝うことがあります。
学生のES(エントリーシート)はよく読みますし、たまに面談もします。
私は採用のプロではなくてただのイチ社員ではありますが、そうした素人の立場で採用選考に参加していても、やはり明らかに学生さんの就活戦略の「良し悪し」の差が分かっていまうことがあります。
就職活動中の学生さん達の役に立つかもしれませんので、ここでは、私が素直に気づいたことや思ったことを書いておきたいと思います。
個人的には、新卒採用って企業と学生の化かし合いみたいで茶番だなあと思っています。しかし、その茶番を生き残ることが人生に必須なのであれば、採用側の目線を理解した上で戦略的に攻略していくことを考えるべきでしょう。
似たようなアピールがめちゃ多い
就職活動シーズンになると、ゼミやサークルの代表や副代表を自称する学生さんが異様に増えるといわれています。
マジでした。
気持ちは分かります。自己PRをしろなんて言われても、普通は何をアピールすればいいのかよく分からないのは当然でしょう。
なので、とりあえず、何か学生時代のグループや集団で就いた役職や肩書をアピールしておくのが無難だと思ってしまうんですよね。
でもそれは、就活生の90%くらいが考えるネタだと思います。さらにその内の50%くらいは、実際にそれをエントリーシートに書くと思います。
つまりは、それだけ被りやすいネタなんですね。
ネタが被るとどういうことになるかというと、まず印象に残りません。つまりプラス評価ゼロです。
そしてプラス評価がゼロということは、選考には通りません。企業の採用倍率を見れば、平均点ではとうてい内定に辿り着けないのは分かりますよね。
ですから差別化戦略が必要なのです。
ゼミやサークルのリーダー話はなぜ使えないのか?
ゼミやサークルでチームをまとめた話はテンプレです。本当にどこにでもある話です。
この話題は、被りやすいという意味でも良くないのですが、内容的にもアピール題材としては微妙だと思います。
なぜかというと、
- ゼミやサークルのチームリーダーには、特別な能力は求められない(能力をアピールできない)
- ゼミやサークルのチームリーダーは、たいした責任を負っていない(責任感をアピールできない)
- ゼミやサークルのチームリーダーは、たいした努力や苦労を求められることはない(忍耐力や問題解決能力をアピールできない)
と、社会人目線では思ってしまうからです。たとえ実際には色々な苦労があったのだとしても。
ちなみに、そこで発生する成果イベントとして、チームメイトの意識の違いや軋轢を話し合いで解決して導いたという展開はひとつの典型例です。しかし、こういったストーリーは、仕事に通じる能力が何もアピールできません。
そもそも、ゼミの代表者なんて指導教授のただのお付き人だし、サークルの代表者なんて単なるお遊びグループのリーダーじゃん、と、心無い大人は感じてしまいがちなのです。
勉強をちゃんとやってきたかって意外と重要
学生の本分は勉強ということからすると、勉強をちゃんとやってきたかどうかは意外と重要です。
専門的な知識を求められる職種に就くなら当然の話ですけど、一般的な就職活動をする文系学生だってそこは変わりません。
これまでは、学生は大学で勉強なんかするよりも、大学の外で色々な経験を積むのが良いんだという風潮が、特に文系では蔓延していたかと思います。確かに、そういう経験の幅を広げる活動も重要とはいえるでしょう。
しかし、今の時代、会社に入ってからも勉強を続けていかないと生き残っていくことはできません。そう考えると、学生時代から真面目に勉強をする習慣があったかどうかというのは結構大事なんですね。
そういうわけで、勉強もちゃんとやってきたアピールはできた方が良いと思います。
部活動の実績は結構ハードルが高い
部活動などでの実績のアピールは、やはり明確であることもあって伝わりやすいです。実際に努力ができないと成果は出ないですからね。
でも、ここでいう実績というのは結構ハードルが高くなりがちです。それこそ、高校時代であればインターハイで結果を残すレベルであるとか、大学であれば体育会系の部活動でずっと本気でやってきたとか。
そこそこ頑張ったというくらいの実績では、上には上がいるということもあり、なかなか評価ポイントには結びつき辛いと思います。
また、競技によっても実績を出すための難易度には差があったりするので、その辺りを含めて面接官に正しく伝えるためには丁寧な説明が求められます。
アルバイトの話は意外に響く
アルバイトは、なんだかんだで仕事ですから、採用側としても聞きやすい題材です。本来はアルバイトなんて学生の本分ではないんですけどね^^;
アルバイトでの経験や工夫というのは、まさに仕事における能力に直結します。良いアピール材料となるでしょう。
一方で、アルバイトでの実績をあまり大げさに語りすぎると、かえって嘘臭くなってしまうので注意が必要です。
例えば、「私が考えて私が実行したアイデア」で施策を実行して、その結果、アルバイト先のお店の売上が何%上がった、とかいう話になってくると、これはホントかよ誇張じゃないか、という印象を抱かせてしまう危険があります。
というのも、基本的に学生というのは、会社においては新入社員よりもさらにまだまだこれからの発展途上の存在として認識されています。
新入社員でもまだそれほど仕事ができるわけではないのに、学生がたった数年間のアルバイトでそんなに大きな成果が出せるわけはないだろう、というのが一般的な先入観なのです。
また、「私の力」だけで仕事の成果が出せることはあまりありません。仕事で成功している人は、その成功が周りの協力によって支えられていることをよく理解しています。
ですから、成果アピールをする場合には、同時に同僚への感謝の気持ちも合わせて表現しておくと、いちおう信憑性が増すかもしれません。
まぁ実際、アルバイトでの成果については、本当に本人のアイデアとの因果関係があったのか、とか、一時的な成果ではなく継続性はあったのか、などを深く切り込まれると苦しくなってくるんじゃないかなー、という気はしていますが。
ここはあまり盛らずに、身の丈にあった仕事での努力や経験を話すと良いでしょう。日々の仕事での小さな工夫くらいが、逆に響きやすいです。
マイナーで個別具体的な話こそ、差別化が効いて印象に残るのです。
知りたいのは素直なストーリー
結局のところ、企業が求める理想の人材像みたいなものにあわせて話を作り上げようとすると、まるで金太郎飴のように同じ内容のアピールがたくさん出来上がるわけです。
そして、話の信憑性も薄くなってしまいます。
そうではなくて、自分の性格や気質を素直に表現した方が、結果的に差別化にもなりますし、印象も良い結果になりやすいのです。
学生の語る自己PRの内容はほとんど信用されていない
また、残念ながら、一生懸命に考えた自己PRの内容というのは、面接官にほとんど信用されていません。
これは、一般的な、いわゆるセールストークというものを頭から信じることができないのと同じことです。売り込みに来ている営業マンの話を、100%信じ込むことはできませんよね。
どうしても、素晴らしさばかりを強調されたアピールは信頼されにくいのです。
逆に、セールストーク臭のしない素直な話の方が人間味があり、信頼されやすいため、好印象を持たれやすいわけです。
知名度やランキングではなく、合うか合わないか、それが問題だ
どんな人にも、性格の傾向や、得意・不得意というものがあります。
そして、その性格や強みに適合した就職先を選ぶことが本来のあるべき就職活動です。そうすれば、入社してから数年後に後悔することのない決断となるのです。
入社してしまえばなんとかなる、と思われるかもしれませんが、毎日会社で働くということはそう甘い話ではありません。合わない会社は続かないのです。それは、世の中の離職率が物語っています。
コミュ力やリーダーシップだけが全てではありません。組織は多様性を求めています。ひたすら地道にコツコツ課題に取り組む人や、慎重に丁寧に仕事に取り組む人を、大手企業だって必要としているのです。
ぜひ、自分に正直な性格や強みを見つけて、金太郎飴の列に並ぶような不毛な争いに加わることのないよう、就職活動を進めていってください。
企業側の視点を知るうえで、下記の本はおすすめです。
「志望動機」についても書いておりますので、こちらもどうぞ。
