不動産鑑定士に将来性はあるのか? 試験の難易度と合格後の仕事について

不動産関連資格の最高峰とは何かといえば、不動産鑑定士こそがそれです。

宅地建物取引士なんて足元にも及びません。試験難易度で見れば、司法試験や公認会計士に次ぐと言われる日本の最難関資格のひとつです。

1次の短答式試験と2次の論文式試験の合格率を単純に掛け算すると、最終合格率は4%〜5%という超低水準で毎年推移しています。

さらに特筆すべきは、毎年の最終合格者数の少なさです。全国すべてあわせて、毎年100人前後しか合格者が出ない非常に狭き門です。

すごい。合格者はまさに選ばれし者。

これだけ合格者数が少ないと、当然何年も受験を続けている大ベテランなんかも存在するはずで、その中で合格率4%〜5%の競争を勝ち抜くのは至難の業あると言えるでしょう。

合格者の努力量と忍耐力の高さについて、疑いの余地はありません。

しかしその反面、資格としての魅力については、実は大いに疑問があります。有り体に言えば、相当コストパフォーマンスに劣る資格なのではないかと思うところがあります。

合格に要するコストは大きい

資格試験に係るコストといっても、いろいろあります。金銭面、労力、所要時間などなど、難関資格はこれらのリソースを総合的に投入して勝ち獲りに行くわけですよね。

金銭面での費用

まずは勉強に要する金銭的なコストから考えてみましょう。

不動産鑑定士は難関資格ですから、独学で勉強するのは現実的ではありません。普通は、資格予備校の講座や模試を活用することになります。

予備校を利用してガチで試験勉強をしている受験生達を相手に、数少ない合格者の椅子を奪い合うわけですから、これはほぼ必須でしょう。ここでハンデを負っていたら勝てません。

しかし、不動産鑑定士は世の中的には比較的マイナーな資格なので、講座を開いている予備校自体が少なかったりします。実質的に選択肢となるのはTACLECくらいでしょうか。

一応、不動産鑑定士講座としてはTACが一番老舗で定番のようですね。

でも、受講料は高いです。通常のコースで400,000円〜500,000円というようなオーダーです。

まぁでも、そこは良しとしましょう。難関資格を取るための費用としては、ひとまず納得できる水準と理解することもできます。

費やす労力

試験に合格するためには膨大な勉強が必要となります。これは多大な労力です。

不動産鑑定士の試験は、メイン科目である「鑑定理論」に加えて、不動産関連の行政法規、および教養科目としての民法経済学会計学といった幅広い分野の問題が問われます。

しかも、鑑定理論、民法、経済学、会計学の4科目は論文試験。内容もエゲツない難易度の専門的な問題が出ます。

論文試験なので、ひたすら知識をインプットして、過去問や予備校の答練でのアウトプットをする作業の繰り返しです。

試験範囲も分野も広く、求められる努力量は膨大です。しかしこれも、難関資格であることを考えれば甘受すべきハードルと言えるでしょう。

合格までに時間もかかる

不動産鑑定士試験の合格に必要な勉強時間は、一般的に最低でも2,000時間と言われています。

2,000時間てどんなもんでしょうか。

たとえば、仕事をしながら勉強はできるのか考えてみましょう。

仮に、平日に毎日3時間勉強すると想定します。相当キツイ想定だと思いますが。

休日には毎日10時間勉強するとしましょう。これも毎回やるのは非常に辛いと思います。

そうすると、1週間の総勉強時間は「3時間×5日」+「10時間×2日」で35時間

1ヶ月が4週間だとすれば、「35時間×4週」で140時間

2,000時間を消化するためには、「2,000時間÷140時間」で、約14.3ヶ月

ということは、1年と2ヶ月ほど超ストイックに勉強し続ければ、合格圏内に到達できるという計算でしょうか。

でも、この2,000時間というのは最低限必要とされる勉強時間で、実際にはもっとかかるのが普通ではないかと思います。話によれば、5,000時間という意見もあったりするくらいです。2.5倍……。

さらに、平日3時間、休日10時間の勉強を毎日欠かさずに継続するのは結構無茶ではないかと思います。サラリーマンが働きながらそれって、無理じゃないですかね。

そう考えれば、標準的なシナリオで考えても、最終合格までに3年〜4年は覚悟しておくのが現実的ではないかと思います。

難関資格です。仕方のないことでしょう。それが合格後に報われるのであれば、それだけのリソースを費やす価値もあるかもしれません。

合格したら報われるのか?

難関資格を取るのが大変なのは、当然のことではあります。問題は、その結果が報われるのかどうかです。

これを、仕事のやりがい、年収、将来性の3面から見てみましょう。

不動産鑑定士の仕事のやりがい

不動産鑑定士の仕事というものを考えるとき、考慮しておくべき前提があります。それは、不動産鑑定事務所で働くのか、それともサラリーマンとして働くのか、ということです。

不動産鑑定士は業務独占資格なので、不動産鑑定士にしかできない仕事というものがあります。それが、不動産鑑定業務です。

これは、不動産の価格等を評価して、不動産鑑定評価報告書というレポートを作成する仕事ですね。

例えば、毎年国土交通省が発表している地価公示や、都道府県の地価調査など、公的な地価に関する評価の実務は不動産鑑定士がやっています。

というか、これこそが、伝統的に不動産鑑定士に求められていた最も主要な仕事です。

しかしこれについては、実態は国からの下請け仕事に過ぎないというような話が、以前に暴露本として出版されてしまいましたね……。

また、最近では、J-REIT(リート)の期末鑑定評価というのも、重要な不動産鑑定士の仕事になってきましたね。

しかしリートの鑑定評価には、信頼性と鑑定事務所のネームバリューが必要ですので、実質的に美味しい仕事はほとんど大手の事務所が掻っ攫ってしまっているのではないでしょうか。

日本不動産研究所とかそのあたりが。

ただでさえ超高倍率の試験を突破して不動産鑑定士になったのに、さらに大手事務所への就職競争にも勝たないとメジャーな仕事にはありつけないという、非常に厳しい現実があるように思います。

その他、不動産鑑定士の特有の仕事として挙げられるのは、裁判や相続等において不動産の価格根拠を示すために鑑定評価が求められるケースでしょうか。

まぁ、良いんですけど、これもなんだか弁護士や司法書士からの外注下請け業務みたいな感じが否めないというか……。

全体的に、なんか不動産鑑定の仕事って面白くなさそうに思えるのは私だけでしょうか。

実際、不動産鑑定士の資格を取っても、鑑定業務には従事せずに事業会社や金融機関に就職するケースなどは非常に多いです。

この場合、不動産鑑定士資格はサラリーマンによる箔付けとしての意味に近く、鑑定業務が彼らのメインの仕事というわけではありません。

やっぱり、資格を取ってもサラリーマンに流れる人が多いという状況それ自体が、鑑定業務そのものはあまり面白くないということを示すひとつの証拠なのではないか、という気もします。

不動産鑑定士の年収

サラリーマンとして働いている不動産鑑定士の年収は、当然就職先の給料に依存しますよね。

このとき、「不動産鑑定士資格を持っているからこそ給料が高くなる」という話は、残念ながらあまり聞きません。

社内弁護士とか社内公認会計士とかだと、高い報酬で雇われる場合もある印象ですけど、不動産鑑定士の場合にはそういう印象があまりない……。

専門知識があることは認められるけども、そもそも通常の事業会社においては社内不動産鑑定士を雇う必要性自体があまり高くないことから、需要が小さく給料の上昇圧力が働かないんですかね。

では、鑑定事務所で鑑定業務を行う不動産鑑定士の収入はどうでしょうか。

地域や年齢によっても差があるでしょうが、目安としては、鑑定士事務所に入所10年目くらいで年収800万円前後、ということがよく言われます。だいたい30代半ばくらいだと思います。

……悪くない。けど、いまひとつ夢もない。

もし、不動産鑑定士になるのと同じくらいの努力をしてきた同世代の人間がいれば、なんというかもっと稼いでいそうな気はします。

不動産鑑定士の将来性

不動産鑑定士の仕事は、今後増えるでしょうか。

うーん、微妙……。

地価公示などの公的評価は、古い仕事です。そうであるが故に、高齢のベテラン鑑定士が行政との繋がりで仕事を押さえてしまっています。

新規参入の余地が非常に限定されているうえに、市場拡大の可能性はほとんどありません。

では、リートの鑑定評価はどうか。先程も言及したように、リートの鑑定については大手鑑定事務所が非常に強いです。依頼者側も、投資家相手の商売ですから大手のブランド力を求めています。

就職で大手事務所に滑り込めれば業務拡大の恩恵に預かれる可能性がありますが、そうでなければ、リート鑑定はあまり縁のない話かもしれません。

裁判鑑定も、一定の需要は今後も引き続きあるでしょうが、特に需要が増えていく将来像は全く見えない……。

という感じで、不動産鑑定業務の需要自体が、全体として今後あまり伸びていく感じがしないんですよね。

そんな状況ですから、いくら士業といえど、不動産鑑定単体で独立開業して食っていくのは非常に難しいのではないでしょうか。

たぶん行政側もそれを分かっているから、不動産鑑定士試験の合格者数がこんなにも少なく抑えられているんだろうなー、というような推測もしてしまうわけです。

コストパフォーマンスが悪い

最難関資格に相応する費用と労力、そして時間が求められる資格でありながら、合格後の展望があまり明るく描けない、メリットが乏しい、ということで、私は不動産鑑定士の資格はコストパフォーマンスが悪い資格だと思っています。

この資格に時間と労力を費やすのであれば、それを他の分野、たとえば英語とかに投入したほうが、よほど効率的に高いリターンと未来の可能性を得られるのではないかと思います。

合格者や受験生の努力は十分に認めますが、資格としてはおすすめできないな、というのが私の意見です。