日本人の英語学習の界隈では、「瞬間英作文」というトレーニング方法があります。
これは、中学生の教科書レベルの簡単な和文を見て、瞬間的に英語の文章に置き換えて話すというものです。これによって、会話においても耐えうる英語の瞬発力をつけることができる、といわれています。
私も、かつてこの瞬間英作文に関する書籍を買って試してみたことがあります。
結論からいって、私にとってはこの勉強法はあまり役に立ちませんでした。今回はその理由を書いておこうと思います。
なお、向き不向きがあると思いますので、これが最高の勉強法だったという人もいるかと思います。でも、少なくとも私には合いませんでした、というお話です。
内容があまりにも単調でつまらない
最大にして致命的な理由はこれです。
つまらない。あまりにもつまらない。
この本に掲載されているのは、実際に会話で使う例文というわけでもなく、本当にありきたりで当たり障りの無い英語の例文の羅列です。
もちろん、この書籍のコンセプト自体が、こうした基本例文を何度も繰り返すことによって英語の語順や文法に慣れるというものですから、当然といえば当然といえるでしょう。でも、やはりどうしてもつまらない。
勉強につまらなさはつきものとはいえ……
もちろん、勉強というものには多少つまらない工程というのも必要です。例えば、語彙を増やすために英単語を暗記するのだって、一般的には単純作業になるためつまらない傾向にあります。
しかし、それでも単語を覚える作業は新しい知識を身につけられるという意味ではまだマシです。瞬間英作文には、新しいことを覚えるという楽しみもありません。
それでも、繰り返せば英文が瞬間的に作れるようになるんだからいいじゃないか、と考えることもできるでしょう。
ですが、この繰り返すという作業が難関で、つまらないことを繰り返すことほど苦痛なことは無いわけです。これを50回とか100回とか繰り返す勉強法は、ストイック過ぎるとしか思えません。
たしかに、それだけやれば簡単な文章の英作文は瞬間的にできるようになるでしょう。でも、それは英語の勉強としては効率的とは言い難いように思います。
それだけの忍耐力と継続力があるならば、もっと語彙を増やしたり、それを実際の英会話の中で使ってみたりなど、他のことにその時間と努力を注いだ方が効果があると思うのです。
瞬間英作文は会話というよりも英文法の訓練に近い
そして、この辛く長い反復練習の末に得られるのは、基本構文の英作文能力です。
これも、基本的な文章を文法的に正しく組み立てられるようになっただけで、当然、幅広い語彙に基づく表現力は身についていません。簡単なことを、文法的に正しく言えるようになっただけです。
もちろん、それができれば英語で基本的な発言はできるようになると思います。しかし、別に文法的な正確性がそこまで十分でなくても英語でモノを伝えることはできますし、より上等な英語を話したいと思えば、やはり基本作文力ではなく語彙力や表現力が必要となるわけです。
どうせ単調な作業を繰り返すのなら、瞬間英作文で細かい英文法の正確性に拘って英文作成の訓練をするよりも、語彙を増やして表現力を高めた方が英会話には効果的のように思うのです。
瞬間英作文はリスニングには大して効果はない
会話をするには相手の言うことを聞く必要がありますが、瞬間英作文のトレーニングにおいては聞き取りは基本的にカバーされていません。発言用の文章を組み立てられるだけです。
そして、話すだけでは会話になりません。
英語の聞き取りにおいては、英語の音を理解すること、そして相手の多彩な表現の意味を理解する必要があるわけですから、この点においても、発音と一体となった語彙力を増やす勉強の方が効果があると思うわけです。
瞬間英作文は労力の割に得られるものが少ない
結局、単調でつまらない反復練習を重ねたとしても、それで英語による会話ができるようになるわけではありません。
長い時間をかけて得られるのは、簡単な日本語を簡単な英文で発言できる能力だけです。
効果が無いとは言いませんが、実践の場で使える英語を「どんどん話す」ためにはやってることが遠回りな気がします。
そういう意味で、頑張りの割には効果が薄く、これをやるくらいなら語彙力を増やす勉強を進めた方が良いと私は思うのです。
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