日本郵政が野村不動産を買収すると聞いて抱いた期待や不安を書いてみる

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日本郵政が野村不動産を買収するというお話が突然飛び込んできたのでびっくりしました。

日本郵政は収益力を高めるため、全国にある郵便局の土地などを有効活用して不動産事業を強化することにし、大手の野村不動産ホールディングスの買収に向けて本格的な検討に入ることが明らかになりました。

関係者によりますと、日本郵政は野村不動産ホールディングスの買収に向けて、TOB=株式の公開買い付けを行う方向で本格的な検討に入りました。

日本郵政は、すでに去年秋に、野村不動産ホールディングスに対して書面で買収の提案を行うとともに、野村不動産の33%余りの株式を保有している証券最大手、野村ホールディングスとの間で調整を進めていました。

その結果、近く、日本郵政が野村不動産ホールディングスの資産内容の評価などを始めるとともに、買収に向けて具体的な交渉に入る見通しとなりました。日本郵政としては株式の過半数を取得し、子会社にすることを目指す方針で、実現すれば買収額は数千億円規模となります。

ただ、日本郵政としては、まずは一部の株式の取得にとどめる形で資本提携を結ぶことも選択肢として検討しています。

野村不動産といえば、大手不動産会社の一角としてかなり存在感のある会社です。

結構、不動産会社としての商品企画力も高いんですよね。

例えば、住宅分野では野村不動産の「プラウド」は高価格帯のマンションブランドとして確固たる地位を築いています。おそらく、一般向け分譲マンションの中ではトップブランドと言っても良いでしょう。

オフィスでもPMO(Premium Midsize Office)といって、中小規模のビルで高級路線のシリーズを展開しています。これも新しいオフィスの形を提案した先駆けみたいなところがあります。

そういう意味では、野村不動産は、日本郵政みたいに不動産について大したノウハウを持ってない会社からするととても魅力的な会社に映ったのかもしれませんね。

野村グループを外れて日本郵政グループの傘下に入るってアリなのね

ところで、野村不動産は社名に「野村」と冠していますから、当然、野村グループの一員なわけです。

あの野村證券を筆頭にした、日本を代表する金融証券グループですね。

今回の買収では、野村ホールディングスが保有する野村不動産の株式を日本郵政グループへ売却するようです。

野村不動産は野村グループの中でも中核企業だと思ってましたから、これを完全に手放して他のグループに売り渡すというのはなかなか予想外でした。

今の市場環境においては、グループに不動産会社はもう要らないという判断なんでしょうか。

日本郵政による過去の会社買収の失敗

それにしても、日本郵政って、最近オーストラリアで行った企業買収で大コケしているんですね。

豪物流会社トール・ホールディングスの買収に伴う損失が4,000億円って……。

しかも、それをやらかした日本郵政現社長の西室氏は、あの東芝の社長も務めていたことがあり、巨額損失を出した米原発メーカーのウェチングハウス買収を主導していた過去もあるようです。

そういうところを見ると、この買収も大丈夫なのか? とちょっと疑問に思ってしまいますよね。

買収によるシナジー効果の可能性はある

日本郵政は、実はすでにたくさんの不動産を保有しています。

その額は2兆円とも言われており、大手不動産会社に引けをとらないくらいの不動産の保有規模です。

しかも、郵便局関係の土地というのは、一等地にある場合も多い。

日本郵政としては、こうした潜在的な優良物件を上手く活用したいと考えているのでしょう。

一方で、野村不動産側も、一等地で開発を行うチャンスが転がり込んでくるのであれば、喜んで取り組むはずです。

そういう意味では、莫大な資産を保有している日本郵政と、豊富なノウハウを保有している野村不動産とが手を組めば、なかなかのシナジー効果が生まれることも期待できると思います。

とはいえ、不安は残る

でもやっぱり性急すぎるし大丈夫かなという印象も持たざるを得ませんね。

両社は社風的にも合うのか? とか。

特に、野村不動産というバリバリの叩き上げ企業が、日本郵政のような官僚的な組織体制に合うのかは不明瞭です。

また、野村不動産側が日本郵政グループの子会社になるということは、日本郵政からのよくわからない役職者が経営陣に天下ってくるかもしれませんよね。

野村不動産の社員のモチベーションは大丈夫なのかな? とか。

最近は不動産業界も盛況ですから、野村不動産の社員が嫌気をさしてしまえば、優秀な人材からどんどん転職して流出してしまう可能性だってあります。

とまぁ、内部的にもいくらかの不安材料はありますが、実はそれ以上に心配なのは(余計なお世話ですが)、今後決まってくるであろう買収価格です。

不動産価格はいま超高いんだけど……

不動産の価格って、アベノミクスが始まった2013年頃から現在に至るまで、ほぼ右肩上がりで上昇してきているんですよね。

そのため、現在の不動産の価格はとっても高いんです。都心部の不動産なんかはちょっと危ういくらいの水準で高いです。

そんな市場環境下において、不動産会社を買収するとどうなるか。

まず、資産価値の算定にあたって、野村不動産が保有する不動産の価格が非常に高く評価されます。TOBを行うにしたって、それを織り込んだ価格設定が必要となります。

すると、買収価格が高騰します。

そして、日本郵政はめちゃめちゃ高値づかみで野村不動産を買収しちゃった挙句、もし何かの拍子で景気が落ち込んだりしたら、企業価値は一気に落ち込みます。

野村不動産の経営自体にはさほど大きな不安要素はないでしょうが、不動産会社というものは本質的に景気サイクルの影響を受けやすい業態です。

景気が悪くなって保有資産の評価額が下がれば、企業価値としても下落せざるを得ません。

結果、日本郵政による買収価格よりも企業価値が大幅に下落して、巨額の減損損失を発生させることになるという。

おや、どっかで聞いたような話が……?

そう考えると今回の買収、金融市場を知り尽くしている野村證券グループが、不動産が高騰している現在の市場環境で思いっきり売り抜けて、最後に笑うだけの顛末になるような気もしてきました。

さすが、世界の野村……っ。

まあ、将来のことは分からないですから、日本郵政さんも国民の資産をたくさん預かっている以上は(私は預けていませんけど)、上手いことやって買収を成功に導いてくれると良いと思っています。