一般的な個人が取り組むべき資産運用については、最適解がほぼ出ていると言えます。
- 日常資産は、銀行預金
- 防衛資産は、個人向け国債変動10
- リスク資産は、インデックス投資信託(NISA及び確定拠出年金)
あとは、これらの資金配分の比率を調整するだけの簡単な作業です。
以下、すこし詳しく見てみましょう。
日常資産:銀行預金
まずは、現金・銀行預金。日々の生活のためにはお金が必要ですから、一定の現金は手元になければいけません。
月々の資金繰りに足る額だけ銀行口座にあれば良いので、資産運用という観点からはそれほど重要な項目ではないでしょう。
ただし、クレジットカードの引き落としに足りる額の残高は必ず用意しておかなければなりません。クレジット引き落とし時の残高不足は文字通り信用にかかわる金融事故です。米国ほど信用情報への傷が致命的な社会ではないとはいえ、信用事故は住宅ローンや自動車ローンの審査、クレジットカード新規発行審査、スマホの割賦払い申込審査、賃貸物件の保証会社利用審査、などなどに影響する可能性があり、なにげに日常生活にも影響しうるため、気を付けておかなければなりません。
銀行口座の選択
銀行口座について、特に理由もなく、惰性でメガバンクの口座を使い続けている方はいらっしゃいませんか? その場合はちょっとだけ他の選択肢も考えてみましょう。
銀行口座は、生活のニーズに合わせて選択されるべきです。重要な決定要因として以下のようなものが考えられます。
- 勤務先からの給与振込口座の金融機関指定
- ATMの利便性
- 預金金利
一般的には、給与振込の口座をそのままメイン口座として利用するでしょう。このとき、勤務先から利用する金融機関を指定されていたら仕方ありませんが、そうでない場合には利便性や経済性の観点から有利な金融機関を選ぶことができます。
最近は現金を使う機会も相当に減ってきていますから、ATMの利便性の優先度は低下してきていると言っても差し支えないでしょう。必要な場合には、コンビニATMを利用することもできます。コンビニATMについては、一定回数は手数料無料で利用できる銀行も増えてきています。
預金金利は、実は案外馬鹿になりません。メガバンク等の大手銀行の普通預金金利の相場は0.001%程度ですが、最近のネット銀行の普通預金金利の上位水準は0.2%くらいです。
あおぞら銀行BANK支店 – 0.2%

住信SBIネット銀行マツイ支店 (MATSUI Bank) – 0.2%
auじぶん銀行 – 0.2% (最大0.3%)
単純計算で金利水準が200倍なわけですが、正直、0.001%も0.2%も字面をみるとどちらも雀の涙程度でたいしたことないというご意見もあるかもしれません。それ自体は否定しませんが、例えば、ペイオフ上限である1,000万円まで普通預金口座に預けた場合には、メガバンクの利息はわずか年100円(税引前)ですが、上記のあおぞら銀行BANK支店や住信SBIネット銀行マツイ支店の場合であれば年20,000円(税引前)になります。実質無リスクで、資金の置き場が異なるだけで年間20,000円近い差が生じうるというのは、案外注目に値すると思います。こういう落ちてるお金をちゃんと拾いに行くメンタリティは大事です。
ちなみに、上記銀行のうち、なんのしがらみもなく0.2%の普通預金金利を得られるのはあおぞら銀行BANK支店です。利払いは半年に1回ですが、余計な必要条件などがないためとても優秀です。
住信SBIネット銀行マツイ支店は、松井証券の証券口座を持っていないと開設することができません。auじぶん銀行は、auのペイアプリやクレジットカード、証券口座との連携が求められるため条件充足が結構面倒くさいです。住信SBIネット銀行マツイ支店とauじぶん銀行は毎月利払いでありその点は有利であるため、元々連携する証券口座を持っているなどの事情がある場合にはおすすめできます。
なお、ここで言及している銀行預金は、あくまで日常決済用の資金の保管手段としての普通預金です。定期預金については対象としていません。なぜならば、一定期間現金として保有しておく資金の場合には、定期預金よりも、後述する個人向け国債の方が防衛資産として優れていると思うからです。
防衛資産:個人向け国債変動10
一般的に、安全資産と言えば国債を指します。銀行預金もペイオフ上限の1,000万円までなら銀行の破綻リスクに晒されないため極めて安全性が高いわけですが、この国債とペイオフ枠内の銀行預金は、一般的な個人が想定しうる最も安全性の高い資産と言えるでしょう。
ちなみに、国債にもデフォルトというテールリスクがありうるわけですが、そこの議論はおそらく不毛というか検討する価値のあるリスクシナリオとはなりづらいでしょう。銀行預金ですら、預金保険機構が機能するという前提の下で成り立つ安全性ですので、日本が財政破綻するような、あるいは多数の国内大手銀行が同時破綻するような極限に振れた事態において、想定されるセーフティネットが完璧に機能するのか、機能したとしてそれが実質的な意味を持つのかどうかの議論については、もはや頭の体操の域を出ません。
現実問題としては、日本に居住し日本円を使って生活している限りにおいては、国債もペイオフ枠内の銀行預金も同等の安全性と言って差支えないでしょう。
さて、国債については個人でも買うことができます。個人向け国債にはいくつかの種類がありますが、我々が見るべきは変動金利型10年満期、通称「変動10」です。最低1万円から買うことができます。
「変動10年」商品概要

これは、実勢金利に応じて半年毎に適用利率が変わる変動金利型の国債です。リーマン・ショック以降長らく続いた金融緩和政策が転換し、日銀が金利上限とマイナス金利を撤廃しつつある現在の情勢下では、今後の国内金利の上昇が予想されます。このとき、変動金利型であれば将来の金利上昇の恩恵を受けることができます。
個人向け国債変動10は、10年満期の国債ですが、発行後1年経過すればいつでも換金が可能です。このとき、直近1年分(半期2回分)の金利が手数料としてとられますが、逆に言えばそこまでの利息は手元に残ります。中途解約によって適用金利が初年度から遡及的に下がってしまう定期預金よりもだいぶ条件は良いと言えるでしょう。
金利は、市場における実際の国債利回りをベースに0.66を掛けた水準で決まります。適用金利は、すでに銀行の普通預金や定期預金の金利を上回る水準に達しています。
変動10年の発行条件

さらに、国債の場合には、ペイオフの上限金額のようなものを気にする必要がありませんので、特に1,000万円を超えるようなまとまった現金を保管しておきたいときに便利です。
この個人向け国債変動10は、その安全性の高さと金利水準の高さから、定期預金の代わりとして利用することができます。将来の使途が決まっていて元本毀損すると困るような資金(住宅購入資金、教育資金など)の置き場としては最適だと思います。変動金利ですので、インフレにもある程度対応することができます。
個人向け国債はどこで買えるのか?
個人向け国債は、銀行や証券会社など様々な金融機関が取り扱っています。
取扱金融機関一覧

個人向け国債は財務省が取り仕切っている金融商品であり、購入に際しての手数料等は掛からないため、コスト面ではどこで買っても同じです。
一部の証券会社は、個人向け国債の購入に際してキャッシュバックのキャンペーンを行っています。中でも野村や大和、日興などの大手証券会社は、一定額以上の個人向け国債の購入へのキャッシュバックに積極的です。こうしたものも、落ちているお金は拾いにいくメンタリティでしっかり取りに行くと良いでしょう。私は、SMBC日興証券で個人向け国債変動10を購入しています。
余談ですが、SMBC日興証券は預かり資産の残高に応じてステージが上がる制度があり、高いステージになるとIPOの当選確率が上がる特典が得られます。預かり資産には当然個人向け国債の残高も含まれますので、IPO投資に興味がある方はこうした付随的なメリットを考慮に入れても良いでしょう。
リスク資産:NISA積立によるインデックス投資信託
最後は、攻めの資産運用としてのリスク資産への投資です。
銀行預金と個人向け国債変動10によって守りの資産を固めたうえで、余裕資金でもってリスク資産への投資を行います。
あくまで、余裕資金です。余裕資金とは、明日突然そのお金が消失霧散しても、日常生活を維持するうえで経済的な悪影響を及ぼすことのない資金です。生活費を投資に使ってはいけませんし、将来の使途が決まっている資金を投資に回すのも望ましくないでしょう。
さらに、リスク資産への投資配分は、明日突然その資産が半分になっても、メンタル的に堪えられる金額に納めるべきです。
その前提で、私が投資すべきと考える銘柄はこれ一本です。
eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)
みんな大好きオルカンです。全世界の株式に分散投資をしているため、リスク分散を図りながら世界経済の成長を享受でき、さらに運用手数料も安いということで、近年の個人インデックス投資家の中ではほぼ最適解のような地位を確立しつつあります。
オルカンではなく米国株式やS&P500を好む宗派もありますが、まあパフォーマンスからみても誤差の範囲です。一般的に分散が広がるほどリターンとリスクが均される傾向にあるので、オルカンの方が理屈上は若干保守的と言えるかもしれません。しかしあくまで誤差の範囲です。
これを、NISAや確定拠出年金(企業DCやiDeCo)を使って積み立てます。まずはNISAの枠を優先して埋めていきます。余裕があれば、これに確定拠出年金を加えても良いでしょう。ただし、NISAや確定拠出年金の投資枠にとらわれて、無理に限度額まで資金投入するのはやめた方がいいでしょう。
たとえオルカンであっても、あくまで余裕資金の範囲内で投資することをお勧めします。いくら分散投資されているとはいえ、結局は原資産は株式です。株式はリターンを見込める反面、最もリスクの大きなアセットクラスの一つでもあり、さらに外国株式の場合には為替リスクも含まれますから、実際結構なリスクを取っていることになります。特に、ここ数年は世界的に株式のパフォーマンスが良かったために利益を享受できた人も多いはずですが、今後は世界的に金融引き締めによる金利上昇によって株式全般のパフォーマンスが悪化する可能性もあり、さらに日本を見てみれば日銀の利上げによって現在の円安状態が反転すればオルカンの評価額は日本円建てで下落しますので、為替の面でのリスクも意識されます。
株価下落と為替変動によって、明日とは言わないまでも、数ヶ月でオルカンの資産が半分になる可能性は普通に考えられると思いますので、そうした事態が生じてもメンタル的に堪えられうる資金配分にとどめておくことが重要です。
すなわち、最初に申し上げた「資金配分の比率調整」とは、余裕資金についてNISAを使ってオルカンに突っ込み、それ以外は個人向け国債変動10で安定運用をする、ということです。
NISAを利用して投資信託を積み立てるための証券会社
この手の投資は大手証券会社よりもネット証券の方が、アプリやシステムの面からも使いやすいです。
私は、松井証券を利用しています。ついでに、住信SBIネット銀行マツイ支店の口座も開設して、上述の普通預金金利のメリットを享受しています。

ネット証券においてはSBI証券がナンバーワンであることはよく知られており、実際、手数料やポイントなどの各種の施策においてSBI証券は常にトップに位置しています(あるいは、他社が抜き出るとすぐさま追随します)。
ただ、ことNISAにおいては、やることはオルカンを積み立てるということですでに決まっており、その範囲においては、どのネット証券会社で投資をしても大して差はありません。
松井証券が唯一他者と比べて遅れているところは、投資信託のクレジットカード積立ができないところです。ただし、これについては私は下記の理由から、クレジットカード積立というものをあまり重視していません。
- クレジットカード積立によってポイントが得られる場合でも、クレジットカード自体に年会費がかかるため、結局ほぼトントンとなりメリットが小さい。
- クレジットカード積立の場合には積立日が月初など月1回に決められており、毎営業日積立ができない。
特に2つ目の理由は大きく、私は毎営業日積立によるドルコスト平均法によって積立投資における精神的安定のメリットを享受しているため、これが積立日指定となると要らぬストレスが生まれてしまい良くありません。
さらに、松井証券はアプリのUIがとても見やすいと思います。SBI証券のアプリやWebサイトのUIが非常にごちゃごちゃしていて好みではないというのも、地味ではありながらSBI証券をメインで使わない結構決定的な要因だったりします。